白川静漢字暦 (2018年)


ひく

九月の字は、「ひく」

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引、弾、援、牽、丿(へつ)の字解です。 (引用は平凡社の漢字暦、また、白川静著作他) 今年も、まず、甲骨文字・金文の字形を見ておき、他に「学研新漢和大辞典」(藤堂明保・加納喜光編)や 「角川大字源」などの辞典、また日本漢字能力検定協会の漢字ペディアなどからも、随時追加します・・ 

更新日  2018年10月23日(火)


丿

(へつ)篆文

==以下引用===========

「丿(へつ)」は右上から左下に引く斜線。

【説文解字】十二下に「右より戻るなり。左に引く形に象る」という。、
独立した用法のない字であるが、「丿乀 (へつふつ)」は左右に引く形であるので、
「漁舟丿乀」のようにいうことがある。

 篆文
 篆文

==以下引用===========

「弾」の声符は單(単たん)。

【説文解字】十二下に「丸を行(や)るなり」とし、
重文の字形について、「或いは弓の丸を持するに従ふ」とあって、
小丸を弾く意とする。甲骨文に、弦に丸をそえたもの、
また弓弦を断続する形にしるすものがあり、
弓弦を弾く形のものは、
古く行われた弾劾の法を示すものであろう。
卜辞に「姜(きょう)五十を弾せんか」とあるのは、
犠牲として姜人を祓う方法であろう。
弓弦には種々の呪的な用法があったようである。
跳出・跳躍の意に用いる。水を渡ることをいう。
これより渡過する意となる。 

弾劾の法
だんがい【弾劾 impeachment】
広く立法部における刑事訴追手続を指す

https://mayonez.jp/topic/1030266

 

「漢字ときあかし辞典」円満字次郎

 訓読み たま、はじ・く、はず・む、ひ・く

パチンコ玉のような丸いものを飛ばす”はじき弓 
→鉄砲や大砲などのたま
→人間の手を離れて相手を傷つける武器(爆弾、焼夷弾)

モノを勢いよくはねとばす
(指で弾く、水を弾く)

激しく非難する(弾劾、糾弾)

たま
球:スポーツのボール
玉:貴重なもの
珠:小さくて輝くもの
弾:弾丸を表す場合だけに使う

”力を加えられたモノがもとの形に戻ろうとする”:弾力、弾性
→(日本語)” もとの形に戻ろうとする勢いによって、何かが動く”:ものの弾み


”弦楽器やピアノを演奏する“:連弾、モーツァルトを弾く
「ひく」と訓読みする語は「引」「牽」「惹」等いろいろあるが、「弾」は 楽器を弾く場合だけに用いる。

 篆文
 篆文

==以下引用===========
「援」の声符は爰(えん)。 
【説文解字】十二下に、「引くなり」 とあり、
援引することをいう。
爰は〇形の玉を上下より両引する形。
貴人の手を援(ひ)くとき、その玉を用いた。

篆文

==以下引用===========
「引」は弓と丨(こん)とに従う。
  【説文解字】十二下に、「弓を開くなり」 とあり、
 弓ひく意。古い形がなく、丨に従う意が明らかでない。
弓を射るには射を用いる。
引は或いは弓勢を直すために
檃栝(いんかつ)(ため木)をそえた形であるかもしれない。

 

 

  甲骨文

==以下引用===========
「牽」は牛と玄とに従う。玄は索(縄)の形。
牛を牽く縻(つな)をつけた形。
甲骨文の字形は、牛の角を手で引き回して逸形につくる。

 

以上、平凡社の2018年9月の漢字暦より。

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