白川静漢字暦 (2017年)


ただしい

2017年6月の漢字
六月の字は、「ただしい」

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2017年6月は、「ただしい」の訓のある、(正,忠,衷,直,儀)の字解です。 (引用は平凡社の漢字暦、また、白川静著作他) 今年も、まず、甲骨文字・金文の字形を見ておき、他に「学研新漢和大辞典」(藤堂明保・加納喜光編)や 「角川大字源」などの辞典、またWEBサイトからも、随時追加します・・ 

更新日  2017年8月21日(月)

「ただしい」というと、「正しい」しか浮かびません。そしてそれは足に関係のある語だということですが、 以下に見てみます。


正甲骨文

==以下引用===========

「正」は、一と止とを組み合わせた形。 
一はもと囗(い) につくり、城郭で囲まれている邑(まち)
止(足あとの形)の古い字形は之(ゆく)と同じで、
行くの意味がある。
正は城邑に向かって人が進む形で、せめて征服するの意。

正は征のもとの字である。
征服者の行為は正当とされ、
その地から貢納を徴することを征といいい、
強制を加えて治めることをという。  

※邑はふつうの読みは「むら」だったと思うが

忠金文

==以下引用===========

「忠」の声符は 中(ちゅう)
【説文解字】十下 に「敬(つつし)むなり」とあり。
【論語】【左伝】に多く見えるが、みなその義。 [ 逸周書、諡法解〕に
「身を危うくして上に奉ずるを忠と曰ふ」と
忠君の意とするのは、後起の義である。  

 

衷金文

==以下引用===========

  「衷」の声符は中(ちゅう)
[説文解字]八上 に「裏の褻衣(せつい)なり」とあり、
衣装の下に着こんだ肌着をいう。 
【左伝、襄二十七年】 「甲を衷(うち) にす」とは、
鎧を下に着こんで、かくすことをいう。
内にあって外にあらわれないもの、
それで衷情・衷心・忠誠のように、心に関して用いる。
切なく思うことを苦衷という 

※褻の読みの「け」(ハレの対)は訓読みということだ

 

直金文

==以下引用===========

「直」は省と乚 (いん)とを組み合わせた形。
省は目の上に呪飾をつけた形で、監査を行なうことをいう。
金文では、道路を巡察して清め祓うことを省道といい、
直はその省から分岐した字である。
悪邪を祓うことにより曲直の意となる。 


 

儀金文

==以下引用===========

「儀」の声符は義(ぎ)
[説文解字]八上 に「度なり」と儀度の意とする。
金文に「威義」とあり、儀はのち分化した字。
義は神に犠牲として供えた羊牲が、完全に神意にかなう意。
それで神につかえるときの儀容を儀というのであろう。 

※度という字は字義が多いようだ←ここでは=制度の度(きまり)だろうか(ほかに程度の度=ほどあい、角度の度=めもり、仏教の得度の度=すくう、忖度の度=おしはかる)

白川静 漢字暦の引用勉強は以上である。

【新明解】 (第六版)では、「ただしい」は私の常用のごとく「正しい」のみ。

【現代漢語例解辞典】(第二版】には、「正」以外全然違う字が取り上げられている。 
「ただしい」の字は4つ  正,貞,禎,(その旧字) であった。
以下にこの辞書より追加

形声。 卜(うらなう)プラス鼎 占って神意を問い、ただす意。また正に通じて、ただしい。甲骨文は鼎に同じ。
意味。正しい、みさおをかたく守り通す。またまごころ

【角川 大字源】巻末同訓異義には、 ただしい・ただすとして
格,規,糾・糺,匡,矯,正,貞,釐の9字
=法度・格式にきちんと合わす =まんまるの少しも狂わないこと、ひずみを正しなおす
糾・糺=人の誤りや悪事を暴き立て、はっきりさせる。「糾明」
=「正」と同じ、ただし「ただしい」とは読まない
=曲がっているものをまっすぐにする 
=動揺することなく、惑わずただしいこと。[論語・衛霊公]「君子貞而不諒」
=もつれ紛れているのを、筋を立ててただす 「釐正」

ここでみた、正は「こわい」字だったかも・・
「糾明」についても 「菜根譚」の
人の小過を責めず、人の陰私を発(あば)かず、人の旧悪を念(おも)わず」 (人間には思いやりが必要である)ということとは全然違う、正義は怖い・・ 20170821


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