2017年5月は、「いこう」の訓のある、休,眠(瞑),息,憩,[口篇に四] (き)の字解です。
(引用は平凡社の漢字暦、また、白川静著作他) 今年も、まず、甲骨文字・金文の字形を見ておき、他に「学研新漢和大辞典」(藤堂明保・加納喜光編)や 「角川大字源」などの辞典、またWEBサイトからも、随時追加します・・
更新日 2017年8月15日(火)
「いこう」というとまずは「憩う」という表記だと思います。「休憩」「休息」とか。 叭の八でなく四の[口偏に四] (き)はちょっとわかりません・・ 以下に見てみます。
==以下引用===========
「息」は、自と心とを組み合わせた形。
自は鼻の形。
鼻息で呼吸することは、生命のあかしである。
【説文解字】十下に「喘(あへ)ぐなり」とするのは、気息の意。
【荘子、大宗師】に「眞人の息するや踵(かかと)を以てし、
衆人の息するや喉を以てす」とあり
気息の法は養生の道とされた。
生息・滋息(ふえる)の意に用いる。
また【戦国策、趙四】に「老臣の賤息」という語があって、子息をいう。
==以下引用===========
「休」は 人と木とを組み合わせた形。
木はもと禾に作る。
禾は軍門として左右に立てる表木。
その表木の前で、軍功の人を表彰することを休という。
軍門旌表(せいひょう)の意よりして、
休烈(偉業)・休寵(恩恵)・休寧(やすらか)の意となる。
のち休憩・休息の意に用いる
*旌:はた
この字と言ったら、木に寄りかかっている人という字解が有名。なんとなく納得させるものであった。こちらは、どうか。
==以下引用===========
[説文解字]四上 に正字を瞑(めい)に作り、字を会意とするが、
いま眠と瞑は慣用を異にする字である。
「眠」の声符は民・
民は眼睛](がんせい)(ひとみ)を突き刺されて視力を失ったものをいう。
眠は目を閉じて眠り息((いこ) うこと、睡眠の意に用いる。
==以下引用===========
「憩」のもとの字は愒 (けい)に作り、声符は曷(かつ)。
【説文解字】 十下 に愒は息(いこ)うなり」とあり
「いこう」の意味に用いる 。
【爾雅、釈詁】に「憩は息ふなり」とあって、愒と憩は同じ訓である
==以下引用===========
口四(※口偏に四)(き) の声符は四 (し)。
正字はおそらく 墍(き)に作り、(既)声。
(口偏に四) はその別体であろう。
【説文解字】二上 に「東夷、息することを謂ひて[口偏に四]と為す」と東夷の語とする。
字はまた嚊 (き)に作る 。
白川静 漢字暦の引用勉強は以上である。
【新明解】 (第六版)では、「憩い」という名詞の項に動詞として「憩う」のみがある。これがいっぱんであろう。
【現代漢語例解辞典】(第二版】には、「いこい」として「憩い」のほかに自の部分が甘になった異体字 憇が挙げられている。
「いこう」の字は4つ 息,愒,憩,憇 であった。
【角川 大字源】巻末同訓異義には、 休,憩,息の3字
休=「息」とともに、いこい休む意。「休」にはまた、物事のやむ意がある。[陶潜・帰去来辞]「感吾生之行休」→やむ
憩=しばらく足を止めて休む。[陶潜・帰去来辞]「策扶老以流憩」
息=しいて言えば、「休」に対して、ひと息入れること
策扶老以流憩 扶老(ステッキ)をついて以って流憩す
時矯首而游観 時に首を矯(あ)げて游観す
雲無心而出岫 雲無心にして岫を出ず
鳥倦飛而知還 鳥飛ぶに倦んで還るを知る
Google Books:現代活学講話選集2 十八史略(下): 激動に生きる 強さの活学
(安岡正篤 著)
木欣欣以向榮 木は欣欣として 以て榮に向かひ
泉涓涓而始流 泉は涓涓として 始めて流る
羨萬物之得時 萬物の 時を得たるを羨み
感吾生之行休 吾が生の 行くゆく休するを感ず
「木々は生い茂り。泉はほとばしる、万物が時を得て栄える中、私は自分の人生が終わりに近づいていくのを
感ずるのだ。」
(by「陶淵明 詩と構想の世界」http://tao.hix05.com/ )