白川静漢字暦 (2016年)


そなえる

2016年1月の漢字
一月の字は、「そなえる」

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2016年1月の字は「そなえる」の訓のある字。(引用は平凡社の漢字暦、また、白川静著作他) まず、甲骨文字・金文の字形を見ておき、 内容は随時追加します

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更新日  2016年1月26日(火)
2016年6月18日(土)

そなえるというと、備える、お供え・・という字がすぐに浮かぶのですが、どれもなく、 [共] ・・これが「供」のもとの字である、という話に始まります・・・


甲骨文(上)、金文(下)

==以下引用===========

「共」は両手にそれぞれ物をもって捧げている形。
甲骨文は左右の手を並べた形
その字は(きょう )で、供(ささげる、備える)のもとの字である。

 甲骨文

==以下引用===========

「具」は貝と廾(きょう)とを組み合わせた形。廾は左右の手を並べた形。の部分は古くは鼎の形であるから、具は両手で鼎を捧げ持つ形。
鼎は祭祀のときに、捧げ持って具(そな)えられた祭器でもあった。
その鼎に入れて供える物を用意することを「備える」、用意されていることを「そなわる」という。

 金文(上)

==以下引用===========

「薦」はそう 草) とたい)とを組み合わせた形。廌は解廌とよばれる羊に似た神聖な獣で、神判の時、この獣を用いた。
金文には上下に草を添える字形があり、廌とは草を籍()いてその上に犠牲の解廌を載せ、神に供え薦めることを示す字である。
「神にすすめる、そなえる、おそなえ」の意味から、すべて「薦める」の意味に用いる。


 

==以下引用===========

「巽」の旧字は  とを組み合わせた形。

跪く人が二人並ぶ形に、ものを置く台の形
神に歌舞を献ずるとき、神前の舞台で二人並んで舞う形で、「神前に供える、備える」の意味となる。

巽与(そんよ)の言

恭しく人に逆らわない言葉。婉曲な言葉、「与」はやわらぐ(新漢語林)
巽:従順卑下の徳(広辞苑)、 易の卦の一つ、方角(古語辞典)
解字 会意。原字は、人二人+台を示すしるし。 一般には=謙遜の遜に当て、へりくだる意に用いる。 (漢字源) 従う、譲るの訓は、遜の仮借(字統)


 

稟(ひん)

==以下引用===========

「稟」はりんとか とを組み合わせた形。
は穀倉の形で、扶持米(ふちまい)をいう。
稟受ひんじゅ 受ける)の意があり、上申することを、稟啓(ひんけい)・稟奏(ひんそう)という。  

以上、平凡社の2016年1月の漢字暦には、共、具、薦、巽、稟の5字が挙げられていたが、 「角川大字源」巻末の同訓異義集を見ると、供、具、備の3字であった(どれも常用漢字)これは白川静『字訓』でも「そなう」と読む項に挙げられた、3字であった。
よって、ここで、備の字の解字を追加します。

==以下引用=(「字訓」p436-7)==========
備は※(び)声。※は箙(えびら)の象形の字で、箙(服)はその形声字。
備とは、箙をつける意で、武装を整えることをいう。それより敵襲に備える意となる。


供は神霊に奉仕する形、
備は箙をつけて戦備を整える形、
具は祭事に鼎を供薦する形

いずれも遺漏があってはならぬことである。
のちの「そろう」とも関係のある語で、ことごとくそろう意をもつものであろう。

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