白川静漢字暦 (2015年)


みちる

盈、実(質〕、充、満、畐

2015年9月の漢字

九月の字は、「みちる」

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2015年9月の字は「みちる」の訓のある字を5つ(盈、実(質〕、充、満、畐)学びます。(引用は平凡社の漢字暦、また、白川静著作他) ・・なお、「現代漢語事典」(林大)には4字あげられている。 「角川類語辞典」では、「満ちる」のみだが、(満ち欠け)限度までいっぱいになる(充ちる)、(開始)月満ちて生まれる(期限がいっぱいになる)、充満(いっぱいに満ちること)、(海流)潮が満ちる・・で、充・満の2字があった。

更新日2015年09月05日(木)

==以下引用===========

「盈」(えい)は《乃の中に又》(こ)と皿(べい)からなる。
は人の座して、膝の盛り上がる盈満の象。
皿は盥盤(かんぱん)(=たらい)の形。
その中に座して浴し、大腿が溢れるような形でもりあがる。 ゆえに盈満(みちる)の意となる。

me※盈満という熟語が耳慣れないが、「現代漢語事典」に、物事が満ち満ちること。例に[後漢書━方術伝、折像〕「盈満之咎」=物事が満ち足りているときは、かえって災いが生じやすいということ、とあり。
※私のなじんでいる熟語は「盈虚」で、月の満ち欠け、比喩的に栄えることと衰えること・・

「現代漢語事典(第2版)」(林大)では たっぷりと皿に食物を盛る、満たす意。 ・・これは〔説文〕の解のまま。
「角川大字源」もこの解。・・ 「会意。意符の皿(うつわ)と意符の(もうけの多い意)とから成る。「エイ」の音は、もうけの多い意(=贏)と関係がある。

〔字統〕白川静
==以下引用===========
会意 《乃の中に又》(こ)と皿(べい)に従う。
人の膝の肉がゆたかにあらわれている形。
〔説文〕五上に「器に満つるなり」と訓し、皿・この会意としているが、〔説文〕はこ五下について、「秦、市買して得ること多きをもってこと為す」としているのであるから、皿・こ会意としてもその字義を求めがたいはずである。
〔慧琳音義〕(えりんおんぎ)に引く〔説文〕によると、「器に満つるなり。皿に従ひ、 こに従ふ。 こは亦聲(えきせい)なり」という。それならば、こは盈と同声であり、姑(こ)の音ではない。かつこ声義を承ける字である。

me要するに、〔説文〕の解釈では会意の字としても亦聲の字としても、字義が求めがたいと。
そこで、〔説文〕説をとらず、「盈は、盤中に沐浴するひとの豊満なる様をいう」という字解になった。

人の座して、下体の豊かな形をこといい、沐浴のために盥に座して盈満するを盈という。
〔文選、古詩十九首、二〕「盈盈たる楼上の女」 は、妓楼のふくよかな遊女をいう。
楹・(糸盈)なども、みなその声義を承ける。
楹とは、エンタシスのあるような柱をいう。

「角川大字源 同訓意義」の解字では、楹は意符の木と,音符の盈(丸く膨らむ意=孕(よう、はらむ))とから成る。丸く膨らんでいる木、はしらの意。
〔字統〕に、春秋期の宮殿建築には、多く円柱を用いている、とあり。

「角川大字源 同訓意義」:器にみちる。[満]に近いが、「盈虚」「盈縮」と対するとき、しだいに多くなってみちる意がある。



充

==以下用===========

 「充」は肥満した人の形。
とくに腹部が肥満した人の姿のようである。
肥えている人は体力・気力が充溢しているとされて、充満の意味となる。
盈は盥(たらい)に入って水を浴びる人の脛がもりあがっている形。
充盈(みちたりること)とは、もと人の肥満していることをいう。

「現代漢語事典」(
形声。充は儿+育(そだつ)の省略形
子どもの生長する意から、みちる意。[※]
充と満の比較・・
充:すみずみまでゆきわたる
満:あふれるほどいっぱいになる:

子どもの生長する意から、みちる意]という箇所、意味不明.
『大字源』:形声。赤子の体が育つ意。かりて、「みちる」
一説に、という部分が現代漢語事典と同じ解。br />

「角川大字源 同訓意義」 :ひとつひとつ押しつめていっぱいにする、いっぱいになる。また当てはめてみたす。
充の解字(大字源)


実(實)


==以下引用===========

「実」のもとの字は實に作り、宀(べい)と貫(かん)からなる。
宀は宗廟、貫は貝貨を貫き連ねた形、貝を宗廟に献ずる形が實で、ゆたかな供え物をいう。それで充実の意となる。

宀の読みはべん? 

「現代漢語事典(第2版)」(林大)
会意。宀(べい)と貝と毌(=周、あまねくゆきわたる)。家の中に財宝が満ちる意。
みちるの意味の例として、「実線」
他の意味は、まこと、ほんとう・ありのまま・・

「角川大字源 同訓意義」 :「虚」の対。いっぱいになってしっかりと実のある意。「虚実」はすっからかんと、しっかり満ちること。
常用訓は「あ・てる」

==以下引用===========

「満」の声符はまん。礼装用の蔽膝(へいしつ)(=ひざかけ、芇がその初)に一面に刺繍を加える形。ゆえに満盈の意がある。

芇のよみはべん。

「現代漢語事典(第2版)」(林大) 
形声。水+(→曼、のびひろがる)、水が一杯にみちる意。


 

==以下引用===========

 「畐」(ふく)は酒樽や壺など、下部にふくらみのある器の形。 それで盈満(えいまん)の意がある。足の無い鬲(れき)(=鼎の類)をいうとする説がある。

「現代漢語事典(第2版)」(林大)にはこの字の訓にみちるはないが、字解は、象形で、「中ほどばふっくらした酒壺の形に象り、ゆたかにみちる意、とある。 部首は田になっている。


補遺

「角川大字源」付録の同訓意義では、盈、実(質〕、充、満の4字のほか、以下の2字
「崇」:積み重ねいっぱいにみたす
「填」:ものの空いた所をうめる
因みに「大字源」本体では、11字だが、「畐」はない。
牣(ジン・ニン)意符の牛と音符=妊(はらみふくれる)牛が肥満している意、ひいてものの充満している意に用いる
塞(ソク・サイ)会意形声。意符の土と、意符と音符を兼ねる宀+工×4(瓦を積み重ねる意)+両手を重ねた形から成る。壁を作り、ふさぐ、隙間なくみちる意。 溢(イツ・シツ)会意形声。意符の水と意符と音符を兼ねる益(エキ・イツ】水が器にいっぱいになる(みちる)意、ひいて、あふれる意に用いる。
稛(ショ・ジョ)意符の禾(いね)と音符の囷(キン)で稲を束ねくくる意。
闐(テン・デン) 意符の門と音符の眞で、門いっぱいに人や物が満ちてふさぐ意
瀰(ビ・ミ)意符の水と音符の彌で、水が満ちる意

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