2023年7月:漢字暦を学ぶ「動詞」(Ⅰ) 

漢字暦

白川静漢字暦 (2023年)


動詞

動詞

2023年7月の漢字暦(平凡社)

七月。八月の字は、「動詞」
  1. me
    為、退、臥、出、入の 字解です。
  2. 引用は平凡社の漢字暦、また、白川静著作他。今年も、まず、甲骨文字・金文の字形を見ておき、他に「学研新漢和大辞典」(藤堂明保・加納喜光編)や 「角川大字源」などの辞典、また日本漢字能力検定協会の漢字ペディアなどからも、随時追加します・・ 
  3. 更新日  2023年8月8日(火)

為
甲骨文

天女モード
『漢字ときあかし辞典』によれば、「何のために何をするのか?」
”何かをする”ことを表す。
訓読みとして現役なのは「ため」。何かの目的や原因を指し示す働きをする。
「為替(かわせ)」は当て字的表現。語源としては”取り換えをする”こと。
旧字(部首つめかんむり=手を表す)

古代文字では、象の鼻先に手を加えた形。象を調教するのがもともとの意味だったという。

退

退
金文

天女モード『漢字ときあかし辞典』によれば、「読みが多くてかえって困る?」
部首「しんにょう」以前はkanjipedia.jp/) と書くのが正字。”移動”を表す記号。
”後ろへ下がる/下がらせる”ことが基本。”出ていく”ことをもいう。
転じて”公の場から遠ざかる/遠ざける”という意味でも用いられる。
「退化」「退屈」の様に”勢いがなくなる”ことを指す場合もある。
訓よみはふつつ「しりぞく」だが、「どく」「のく」「ひく」などとも読むことができる。どちらも送り仮名が「く」だけなので、現在は「退く」は「しりぞく」と読むのが標準とされる。

臥
篆文

天女モード『漢字ときあかし辞典』によれば、「起き上がるのがおっくうだ…」
”横になって休む”ことを表す。
部首「臣」は「下を見る」という意味。
現在は同訓異字の「伏す」を使うこと多いが、"体力がなくて横になる”場合は、こちらを使う。

出 甲骨文

『漢字ときあかし辞典』によれば、
「どこからどこへ何をしに?」外へ移動することが基本。
部首「うけばこ」は形の上から便宜的に分類されたもので、意味の関係はない。

「出発」「出国:どこかから移動
「出席」「出社」:どこかへ移動
「出費」「提出」:何を移動する 「出現」「噴出」:隠れていたものが現れる
「傑出』「突出」:”目立つ”
「出身」「「名門校の出」:”ある所からやってきた”
「凄い人出」「水道の出」:”移動の勢い”
投手な読み「出納」(すいとう)
”いずる”は古めかしい言い方で、「いでよ、勇者たち」 「日出ずるところ」

入
金文

『漢字ときあかし辞典』によれば、「 ときどき古風に読まれます」
場所、時期。段階など”ある範囲の内側へと進む/進める”ことを表す。
音読みはニュウを用いるのが大原則。ジュは奈良時代以前からある古い読み方。
「入洛」:都に入る、「入内」:天皇の妻になる
訓読み「いる」は基本的には「はいる」の古語 現在でも「客の入り」「プロ入り」の様に」入り」の形でよく用いられる。
同訓異字の「容」は、”余地がある””きちんとおさまる”いめじ。
部首としては、以前は「 」「 」がそうだったが、現在では微妙に変化して、「全」「内」と書かれ、それぞれ別部首になり、部首としてはさみしい思いをしているはずである。

 


落合淳思著(中公新書2019)


常用字解 第二版
白川 静著 平凡社 2012


四字熟語ときあかし辞典
円満字 二郎著 研究社 2018


部首のはなし―漢字を解剖する
阿辻 哲次 著 (中公新書– 2004)