漢字の辞書

漢字(文字のおさらい 7)

字数の増加を各時代の字書の収録数で示すと、
秦の『蒼頡篇』に3,300字、
後漢の『説文解字』に9,353字、
魏の『広雅』に18,151字、
梁の『玉篇』に16,917字、
唐の『韻海鑑源』に26,911字、
北宋の『広韻』に26,194字、
明の『字彙』に33,179字・『正字通』に33,671字、
清の『康熙字典』では49,030字に至る

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小学

現存最古の図書分類目録である『漢書』芸文志 (西暦1世紀)は、書籍を六芸略・諸 子略・詩賦略・兵書略・数術略・方技略の6部に分類している。
その中で、漢字の字形・ 訓詁(字義)・音韻など文字学に関する研究は、儒教経典とその思想に対する研究(「大 学」)の基礎研究であったところから、「小学」と称され、易・書・詩・礼・春秋・論語・ 孝経といった儒教経典とともに「六芸略」に収められた。

中国の図書分類は、西晋時代(3世紀)に4部に分類する原型が生まれ、唐 初の『隋書』経籍志がそれを採用して以後、〈経・史・子・集〉という四類分 が漢籍 を分類する一般的なスタイルとなった。
文字学の書籍 は「小学」と称され、儒教経典を収めた経部に付属


清の隆乾帝在位1735~1795)が編纂を命じた『四庫全書 』は、
約8万巻を収める一大叢書で、
それら収録書籍の解題をまとめた 『四庫全書総目提要』(以下『四庫提要』) もある。
ともに、膨大な書籍とその解題を、四部分類によって整理・分類している。
『四庫提要』の「小学」に関する記述では、
辞書は「字書 」「韻書」「訓詁」 の3種に分類されている。

「訓詁」とは、難解な字の意味を平易な言葉で説明すること(=訓) と、古語の字義を現代語で説明すること(=詁)をいい、つまりは字義の説明で、 「義書」とも称せる。

義書

爾雅

戦国~漢代初期 19編  
語義・意義分類体
儒家の編集?

釈名

後漢末 27篇  
字音と字儀の関係重視
劉煕編

爾雅 Ěr yǎ】 じが    世界大百科事典 第2版の解説

中国古代の字書。いま伝わる本は全19篇。著者,著作の年代,ともに未詳

『爾雅』全文 (中文)http://ctext.org/er-ya/zh

中国最古の類語辞典・語釈辞典。
儒教では周公制作説があるが、春秋戦国時代以降に行われた古典の語義解釈を漢初の学者が整理補充したものと考えられている。訓詁学の書


「釈詁」篇は古人が用いた同義語を分類し、
「釈言」篇は日常語を、
「釈訓」篇はオノマトペを主とする連綿語(2音節語)などの同義語を分類

漢唐の古文学や清朝考証学において非常に重視され、後には十三経の一つに挙げられている。

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『釈名』は、声訓を広く字義解釈に適用した。これは、〈字音は字義に密接に関わ る〉とする考えによる。
のちに宋代には「右文説 うぶんせつ」が起こる。これは、〈形声文字の声符(音を表す部分) こそが意味を表す〉という説で字音と字義との関係を重視するこれらの説は、 のちの清朝の考証学において注目され、藤堂明保  『漢字語源辞典』(1965 年)等につながっていった。

戴震(たいしん、1724 - 1777) 清代考証学を大成させた。


字書

説文解字

AD100年 9,353字 540部
許慎 :現存最古の字形によって分類配列した辞書
原義研究の対象:小篆(隷書体が正書体であった時代の古文字)
2000年間、文字学の聖典
部首による分類、体系化

親字のほか、「重文ちょうぶん (異体字)」として籀文(ちゅうぶん)や古文をも掲げる。
籀文…戦国時代、秦の地域で使われていた、小篆のもとになった文字。
古文…東方の斉・魯の地域で使われていた文字。

玉篇

543年 16,917字 542部
顧野王(こやおう) 漢語の音韻の発見の時代
反切法によって 字音を注記
音義に複数あるもの(破読)も全て掲げる

字彙

1615年 33,179 214部
梅膺祚(ばいようそ):部首画引きという画期

康煕字典

1716年 47,035字 214部
勅撰

韻書

切韻

601年 11,558字 193韻目 
中国最古の韻書

広韻

1008年 206韻目
陳彭年(宋)

平水新刊韻略

1226年 106韻目
王幾文(金)
『広韻』を簡略化、実際の詩作に使用された
「平水韻」とも

佩文韻府

1711年 106韻目

張玉書(清)
熟語後字を平水韻の順に配列
膨大な語彙・用例を出処を明示して掲載= 古典解読の参考書としても有用

夏目漱石が使用していた


反切について
反切とは、「A、BC反(Aは、BCの反)」という形式によってA字の発音を示 す方法である。
「A字の発音」=「B字の声母」+「C字の韻母・声調」 という示し方で
A字を「反切帰字」、B字を「反切上字」、C字を 「反切下字」とよぶ。


『干禄字書』
唐・顔元孫(?~714 年)撰
楷書体による規範的な書体を整理した書物
官吏登用 試験(科挙)の準備のため、用途にふさわしい字体を知る必要から編纂された実用書(字様書)


近代辞書

辞源

1915年 単字12,890
複合語4,134条
部首画引き214部
日本の『漢和大事典』(1903年重野・三島・服部編三省堂刊)が編纂に影響を与えた

国語辞典

1931年  
標準音の提示目的
⇒重編で総合的規範的な辞書に

重編国語辞典

1981年 単字11,412
一般語彙74,416条
学術名詞25,438条
固有名11,623
計122,889条
台湾商務印書館 
標準音の提示目的
⇒重編で総合的規範的な辞書に

A:義書(訓詁の書)…『爾雅(じが)』『釈名(しゃくみょう)』
→文字の意義・用法の違いによって分類・配列
B:字書…『説文解字(せつもんかいじ)』『玉篇(ぎょくへん)』
『字彙(じい)』『康熙字典(こうきじてん)』
→文字の形体の違いにより類別・配列
C:韻書…『切韻(せついん)』『広韻(こういん)』『佩文韻府(はいぶんいんぷ)』
→文字の音の違いによって類別・配列
D:近代辞書…『辞源(じげん)』『国語辞典』
→形・音・義に関する研究の集約

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