漢字暦

白川静漢字暦 (2020年)


とき

十二月の字は、「とき」

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「時、秋(龝)、候、期、漏」の5字の字解です。 (引用は平凡社の漢字暦他) ・・ 

更新日  2020年 12月28日(月) 追記2023年4月19日(火)

この「とき」という言葉には、思い入れがあると思う‥


篆文

天女モード『漢字ときあかし辞典』によれば、
「いつも変わらず流れゆく」、移り変わっていく”とき”を 表す。
時空、時の流れ
・・大きなスケールでいう場合もある
時価、時局、今を時めく
・・ある瞬間を指すこともある
時節、時効・・”季節”に近い意味
時効、時限爆弾・・・”いずれやってくるその時”
午後一時、三時間・・時間の単位として。
さまざまな”とき”を広く表す語である。
ちなみに、時計は「土圭」(地面に落ちた影の長さで時間を測る日時計)の当て字
時雨(しぐれ)は短い時間で上がる雨という意味の日本語の当て字

秋(龝)

甲骨文

 

天女モードこの字形、複雑だが、なんだか頭に角があるようだと思ったら、は穀につく虫の形という。 卜文に、秋に虫害をなすものを炊く形の字がある、と。
禾+龜+火・・龜は亀の旧字だとのみ思っていたが・・

天女モードまた、おそらく秋と関係のある字であろうが、卜文に四季の名を確かめうる資料はない。
豊凶を定める大事な時であるから、「危急存亡の秋(とき)」 のように用いる、という

『漢字ときあかし辞典』によれば、「秋」は
思いを込めて待ち望む、 穀物の実る季節”あき”を表す。
収穫を迎える最も大切な季節であるから、”年”を代表して使われることもある。I例:一日千秋)
季節に限らず”重要な時”を指すこともある。その場合は「とき」と訓読みする。
現在では「危急存亡の秋」という決まり文句以外では見かけない。

甲骨文

天女モード『漢字ときあかし辞典』によれば、スタンバイしております、と。
天候、気候、徴候・・”注意して見るとわかる状態”。本来は近づいて注意して見る”(例:斥候)
そこから”そばにいる”という意味が生じ、この意味の古語”さぶらふ”が変化したのが訓読み「そうろう」(例:居候いそうろう)
そばにいることは”準備して待つ”ことでもある。(例:候補)

篆文

 

天女モード『漢字ときあかし辞典』によれば、 それは無情にもやってくる、と。
部首「月」・・”つき”が規則正しく満ち欠けすることから、”定められた時間”を表す。
期間、時期、会期、延期、繁忙期、思春期など、熟語の例は多い。、
時間を決めることから、”約束して待つ”という意味も表す。(例:完成は来年を期す)
”あてにして待つ”(例:期待、予期、、期せずして)
根本にあるのは、かならずやってくる”そのとき”のイメージ(例:適齢期、潜伏期、死期)
音読みはキを用いるが、奈良時代以前からある古い読み方で、ゴ・・最期(さいご)、 、一期一会、この期に及んで

この字形、なんだがペンギンみたいでかわいい・、と思ったが、無関係((笑))

金文

天女モード『漢字ときあかし辞典』によれば、ぽたぽたという音もわびしく、と。
基本的な意味は、 ”すきまや穴から水が流れ落ちる”こと。
広く、 ”閉じ込められたものが少しずつ外に出ることを指しても用いる。(例:漏電、情報漏洩)
”取りこぼす”、”抜け落ちる”(例:遺漏がないようにチェックする)
「漏刻」は水時計。

Model of Rokoku
漏刻(飛鳥資料館) Model of Rokoku
唐の呂才が考案した漏刻の復元模型


唐朝呂才漏刻 Lu Cai's Clepsydra of the Tang Dynasty

Water clock zibad
ペルシアのフェンジャーン(水時計):Water clock zibad

以上、平凡社の2020年12月の漢字暦を読む、「とき」を表す字として、
「時、秋(龝)、候、期、漏」の5字で、漏刻は、水時計で、 砂時計同様、 もれる「度」を定めて時を計ったという事であるが、いまいち。この最後の「漏」には、「とき」の意味は無いでは?と、「刻」のほうに意味があるのではと思い、刻を追加します‥(2023年4月19日追記)

天女モード『漢字ときあかし辞典』によれば、その瞬間を逃さないで、と。
部首りっとう(刀の変形)”刃物で削ってなんらかの形を作る”(例:彫刻、刻印)転じて”苦しみを与える”(例:深刻、刻苦)
「時刻」「夕刻」「刻刻」「一刻を争う」などでは、時計に刻んだ目盛りから”ある短い時間”をも表すと。この意味で使われる例が実は最も多く、「刻限」「遅刻」「定刻」「先刻承知だ」のように、特に”何かをするべきタイミング”を去る例も目立つ。
「時を刻む」では、”一瞬一瞬が経過する”ことをいう、と。

 

馬の象形
馬の鬣(たてがみ)
『漢字の字形』第1章の 扉絵

落合淳思著(中公新書2019)


常用字解 第二版
白川 静著 平凡社 2012


四字熟語ときあかし辞典
円満字 二郎著 研究社 2018


部首のはなし―漢字を解剖する
阿辻 哲次 著 (中公新書– 2004)