白川静漢字暦 (2020年)


まち

四月の字は、「まち」

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「里、町、街、市、坊」の字解です。 (引用は平凡社の漢字暦、また、白川静著作他) ・・ 
※こちらの『漢字暦』の字解は『字統』(1984年8月)からの抜粋になっていますので、
『常用字解』(2003年12月= 中・高校生向けの平易な常用漢字の基本字典)からの引用を足しておきたい。

更新日  2020年5月1日(金)

『常用字解』初版(2003)収録は1945字+曰で、 1981年制定の常用漢字数に従う。2010年の常用漢字表改定で、第二版(2012)は、2136字に増補されている。

他の参照辞書
a.『漢字解き明かし辞典』円満字二郎著(研究社2012)、
b. 『部首解き明かし辞典』円満字二郎著(研究社2013)



金文

『常用字解』(白川静 平凡社 初版2003)のp642 訓(さと・むら)
会意。他と土を組み合わせた形。土は社(神を祭るやしろ)の元の字であるから、田の神を祭る社(やしろ)のあるところを里といい、その社を中心に人々が住むようになったので、「差と、むらざと、むら」の意味に用いる。
国語の「さと」は、土地の守護神(産土神うぶすながみ)を祭る場所を中心として営まれる生活の場という意味であるから、里のもとの意味に適合する。
俚(り)はいなか、いやしいの意味に使う。


篆文

『常用字解』(白川静 平凡社 初版2003)のp447 訓(まち、あぜ)
形声。【説文解字】 十二上→田の「あぜ道、あぜ」の意味とする。
国語では田の区画、人口の密集した市街地である「まち」、地方公共団体(都道府県・市町村)の町の意味に用いる。

篆文

『常用字解』(白川静 平凡社 初版2003)のp062 訓(まち・みち)
形声。音符は圭。圭に(ガイ)崖(がけ)・涯(みぎわ)の音がある。
圭は土を長方形の土板の形とし、その上に占いの結果を描いた。
通路はその土板のように整然と区画されるので、そのように作られた道路を街道(幹線道路。まちの広い道)、街路(まちの通り9おちう、
行は十字路の形である。「よつまたのみち、みち、ちまた」の意味に用いる。

篆文


『常用字解』(白川静 平凡社 初版2003)のp240 訓(いち・かう・まち)
象形。市(いち)の立つ場所を示すためにたてる標識の形。
市が開かれる場所は多くの人々が集まるので、高い標識を立て、監督者を派遣して管理した。
古い字形には、上部に止(し)という音符を加えるものがあるが、市の字形にはその形が遺されていないので、象形とする。
市は「いち、うる、かう」の意味であるが、市の立つ「町、都市」の意味にも用いる。
古代の歌垣(うたがき)の場所でもあった。

その他

 

『常用字解』(白川静 平凡社 初版2003)のp587 訓(まち・みせ・てら)
形声。音符は方(ほう)。方に方形に区画するの意味がある。
城内の街路の区画は条里によって区分され、その一区画を坊といい、坊市(まち)のように、「まち」の意味に用い、坊肆(ぼうし 店) ;酒坊(酒屋)のように「店」の意味にも用いる。寺院の内部も坊に分かれ、国語では「てら」の意味に用いる。僧たちが住む寺院内の家屋を坊舎・僧坊といい、坊舎の主人を坊主(ぼうず)という。

ここでは、酒屋は酒房が一般で、僧坊も「僧房」が一般か?
「房」の方は、訓が、「ふさ・へや・すまい」であった・8p589)

以上、「まち」という意味のある字の字解であったが、中で、「坊」にまちという意味があるというのは、驚きであった。
また、「花の町」「花いっぱいの街づくり」などなどの表記があり、違和感もあるが、「町」と「街」の違い | 日本語早わかり(https://nihon-go.jp/)に 「まち」の表記で「迷った場合は町」とあり。


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