白川静漢字暦 (2020年)


いくさ

八月の字は、「いくさ」

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「戦、師、兵、戎、役」の5字の字解です。 (引用は平凡社の漢字暦他) ・・ 
これらの字に「いくさ」という訓があるのに驚きであった・・
今年度からは、一般により明快な『常用字解』を併用します。

更新日  2020年 8月13日(木)



金文


『常用字解』(白川静 平凡社 初版2003)のp380)
会意。もとの字は戰に作り、單(単)と戈(か)とを組み合わせた形。單は上部に二本の羽飾りのついた楕円形の盾の形。
金文の図象に右手に干(たて)を持って身を守り、左手に戈を持って攻撃する形のものがある。

国語の「たたかふ」は「楯交ふ」の意味であろう。顫(せん ふるえる)と同音の語として通用し、「おののく」の意味にも用いる。

金文

 

『常用字解』p247
会意。𠂤(し)=軍が出征するとき、祖先を祭る廟(みたまや)や軍社で肉を供えて、戦勝祈願の祭りをする、その祭りの肉。の形で賑肉(しんにく)という。
この肉を携えて出発し、 軍の駐屯地では壇を作ってその上に安置した 。
その形がである。
建物の中に安置するときは官となる。もし軍が分かれて行動するときは、賑肉を切り分けて携えて行動した。賑肉は軍の守護霊であるから、出征中の各軍は必ず携えなければならない。
賑肉を切り分ける時に使う血止めのついた刀で、師はこの刀で賑肉を切り取ることをいう.・この肉を切り取る権限を持っている者が師で、「軍長、将軍」をいう。将軍には古く氏族の長老が当たり、現役引退後は氏族の指導者として若者の教育に当たったので、師は「せんせい」の意味にも用いる。

甲骨文

会意。武器の斧を両手で振りかざしている形が兵。戈を両手で持ち上げている形が戒で、戦いに供える、いましめるの意味となる。

甲骨文

 

『常用字解』p408 ※戎は常用外
賊(もとの字は鼎+戎)が常用漢字

鼎には保存すべき重要な契約・盟誓が刻まれることがあり、この銘文を兵器で削り傷つけることを賊といい、「そこなう、やぶる、わるもの」の意味となる。

篆文

『常用字解』p617 

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