美の聖堂

色のシンボル

黒い色


黒という色についての考察だが、
黒という字の字解にみる、黒のイメージ、また、
シンボル事典、色彩の本からの黒のイメージ(※)を見るをみる。

シンボル事典より

色の解釈には個人差があるにおかかわらず、
古代諸文明はそれぞれ伝統的に
色に関する一定のシンボル体系を持っていた。
それは多様な席世界の中で自らの位置を決めたり、
世界を秩序付けるための基本原理に関連していた。
図説 世界シンボル事典

「絵画の場合は、色彩美は黒色を背景をする場合に最も印象的に感じられるようだ(有彩色間の相互作用が生じないため)」(p153)

文化の原色として、
色の名前の中国の漢字(象形文字)・・・・・
赤・ 黒(黄も)火に関係した形であると、されるが、
まずここで、漢字じ(字/辞)書から「黒」という文字をみます。
  1. 『漢字の字形』落合淳思
  2. 『常用字解』白川静
  3. 『字統』白川静
  4. 『学研新漢和大字典』藤堂明保/l加納喜光)
  5. 『新字源』 小川環樹/西田太一郎/赤塚忠 
  6. 『甲骨文字小事典』落合淳思
  7. 『漢字ときあかし辞典』円満字二郎

『漢字の字形甲骨文字から篆書、楷書へ』

・・・出典:落合淳思 著、中公新書(2019)
元が何か分からない字の一つとしている
”新字体の黒にも長い歴史があった”(p176)


『甲骨文字小事典』 落合淳思


黒も日照りに関係のある文字ではないだろうか

『常用字解』白川静

ふくろの中のものを焦がして黒くする

『 字統』白川静

中のものを薫蒸して黒めて色をとる

『学研新漢和大字典』

(藤堂明保/加納喜光)
煙突に点々とすすのついたことから、くろい色を表す。

『角川新字源』

(小川環樹/西田太一郎/赤塚忠編)

 

『角川大字源』

山田勝美/西岡弘/都留春雄/ 尾崎雄二郎/山田俊雄編

『漢字ときあかし辞典』円満字二郎

補足(部首:黒)

よく使われている字に限定して

『漢字音符字典』

山本康孝編著(2007 アド・ポポロ刊の漢字学習書)には、黒の部として、墨と黙が挙げられていた。
「コク」という音符を持つ時は、
国の他。谷、克、告。で計5つ挙げられていた。

『漢字ときあかし辞典字典」

円満字二郎著(2012研究社)では、黙を黒の部とするもの。犬の部の方がふさわしいとある。(→犬牲)

補足(熟語:黒)

『学研新漢和大字典]』

(藤堂明保/l納喜光)

黒のイメ―ジ

タブーの黒

色に関する文献より

『色の博物誌』世界の色彩感覚

いろという漢字は色だが、ヒンドゥー的認識では、色(しき)は五感を通じて加害から受け取る刺激のことであり。(p22 那谷敏郎:文化史家)

”物”と”色”。この二つの異なったものを区別して考えることが、人々にとっては不自然であった時代が、はるか昔には存在していたに違いない。そのころには、ある種の色は果実そのもの、鉱物そのもの、自然現象そのものであったというわけである。 (p42 西江雅之::文化人類学者)

白 黒 グレイ

限りなく明るく、限りなく暗い、その極限の色。
昼と夜、吉と凶、勝ちと負け。
光を反射する白と、光を吸収する黒と、その中間に無限の濃淡で影を刻む灰色は、コンクリオートの環境、都会の印象。(p91)

黒い色を表す英語の古い名称スワートは、汚れた、汚いという事と関係があったというし、原題英語のブラックBlackは、古代スカンジナビア語の暗いという意味の言葉に由来するとされている。
また多くの言語で、黒を意味する言葉は、黒色顔料から生まれたともいわれている。油煙黒のランプ・ブラックは黒色顔料の代表であろう。
他に、黒い物質の名前に黒鉛のグラフィット、碧玉ジャスパー、黒玉、貝褐炭のジエット、溶岩のラーヴァなどもあるが、これらはしょせんオフ・ブラックで、似て非なる黒のことにすぎない。
光の欠如による暗いという感覚をあらわす色名に、夜の地平ナイト・ホライズンとかフランス語で影のことをオンブルというのがある。
ブラウン系と同様に、有色人種の肌色を示す色名がブラックにもある。ヌビア人のニュービアンなどである。黒人のニーグローはスペイン語で黒の事でもあるからやむをえない。肌色による人種差別は結局、色の差異に関心の高い色彩文化の副産物であったと思うほかはない。

諸民族の嗜好色
(色彩嗜好調査)青を一位にあげているデータが半数で、 青か白が一位
日本 1.白 2.青 3.緑 4.赤 5.黄 6.黒 7.グレー
タブーの色
85%の国が何らかの色をタブーとしている
その中で圧倒的に黒が多く、7割強の国が黒を凶の色とみている
黒のイメ―ジ=ネガティブな象徴的意味
キリスト教

死、喪、鎮魂の色
ブラック・フライデー=キリスト処刑の日

※死者へのミサの際に聖職者が着る色  イメージ・シンボル事典

インドのカースト 最下層スードラの色
ヒンズー教 邪悪の色、破壊神シバの色
占星術 疫病や洪水の象徴
紋章学 哀しみ、不幸、危険 べックラー「紋章学」(17世紀)
死、悪、闇の連想

ペスト=ブラック・デス(黒死病) 

黒ミサ、黒魔術

こちらの『色で読む中世ヨーロッパ』徳井淑子著 (講談社選書メチエ 2006)の目次読書から、黒の部分を以下引用する。

七つの虹の色が発見されたのは、1704年ニュートンの「光学」
太陽の白色工はプリズムによって赤・オレンジ・黄・緑・青・藍・菫(ヴァイオレット)のスペクトルに分解されることが発見され、ここに七つの虹の色から白と黒が無彩色として科学的に分けられることになった。{p32)

黒について、14世紀末ごろからイメージが反転して、 それまでの黒い色に付随していた 負の感情(汚い・醜い・危ない、絶望、憤怒、嫉妬、不安、悲嘆)から、 悲しみの色としての黒を再発見して、 根強い流行色になった、(p192)

「黒い服」 に続く