色についての基本 に続き、以下、目次読書です・・
涙文とは、しずくの形をした模様で十三世紀のアーサー王物語を 起源にもつ。本来は物語の中の紋章であったが中世末期の貴族が文学の中のアーサー王 の騎士たちを自らの手本とし、「涙の泉の」と冠した武芸大会をブルゴーニュ公フィリップ 善良公が催したことによって、涙文はドゥヴィーズとして多用されるようになり、衣服や宝飾品などさまざまなも のに使われ、中世末期の人々の生活の場を彩るようになった。(p192)
「涙模様」とは、この本で初見です。はじめに
「シュレック」と中世ヨーロッパ/ 色を発見した十二世紀序章/色彩文明の中世
黄色と縞柄のパジャマ・ルック「色の意味は時の流れとともに変化する。しかし、その意味のすべてが時間の経過の中で跡形もなく消えてしまうわけではない。文明の底に残る意味と変化する意味、その両者を見つめていこう」p17
図
騎馬試合の騎士(p27)
図: アンジュー公ルネ著「騎馬試合の書」フランス国立図書館(p28)
第一章 中世の色彩体系
白・黒・赤による色彩体系「七つの虹の色が発見されたのは、1704年ニュートンの「光学」
太陽の白色工はプリズムによって赤・オレンジ・黄・緑・青・藍・菫(ヴァイオレット)のスペクトルに分解されることが発見され、ここに七つの虹の色から白と黒が無彩色として科学的に分けられることになった。」p32
第二章 権威と護府の赤
赤色のヴァリエーション「赤が中世に好まれた色であることは、この色を示す言葉の豊かさによってもうかがわれる。
」p32
ラテン語ruber⇒rouge(ルージュ)赤い宝石ルビー
vermeil赤い花などもっとも頻繁
に使われるフランス語
⇒英語vermilioinバーミリオン
スカーレットscarlet・・本来は中世ヨーロッパで産した深紅の高級毛織物
vermiculusミミズや蛆虫の幼虫
虫から取れる染料ケルメス染料
「中世は、古代文明の遺産である貝紫パープルという赤紫色の布への憧憬を受け継ぎ、赤色を尊重する文化的土壌をもっていた」(p61)
部中のケルメスカシや緑カシに寄生するカイガラムシ
ケルメス染料によるスカーレットが中世以降ふるわなくなるのは、
安価な中南米のコチニール染料がもたらされたため。
ケルメス染料1グラムに60匹の虫が必要・・1メートルの布代=600日分のパン代
貝紫・・純粋な染料1グラムに1万個の貝(アクキガイ科の巻貝)が必要(紀元前10世紀フェニキアから・・皇帝のシンボル、王侯の衣装)(p64)
赤は血の色
図:
シチリア王ルッジェーロ2世(Wikipedia)戴冠式のパープルのマント1133年 ウィーン美術史博物館(p66)
※この図は視覚デザイン研究所の「ヨーロッパ文様事典」などにも載っている。パープルとは書いてなく、イタリア初期織物の産地シチリアの王立シルク工場で作られた、真珠と金糸で刺繍した豪華なまンととあり。聖樹を中心とした動物闘争文というが、一見、ライオンの目鼻がないように見える。
図:
ジャン・フーケ画 ルーブル美術館蔵
大法官ジュヴネル・デ・ジュルサン 1460年ごろ
Charles VII_by Jean Fouquet 1445〜1450
シャルル7世の肖像1445年ごろ(p70) z
ジャン・フーケ画 ルーブル美術館蔵・・
これは大法官の方と一緒にローレンス・ゴウイングの「ルーブル美術館の絵画』に載っています
図:
「聖ステファノ伝」(Wikipedia)より マルティーノ・ディ・バルトロメオ画 15世紀
フランクフルト、ステューデル美術館蔵(p75)
(おくるみに包まれた赤ん坊が首に赤い珊瑚の枝をつりさげている)
マザッチョ フィレンツェ ウフィッツィ美術館(p76にある図)
(「くすぐる聖母」※)
第三章 王から庶民までの青
蛮族の色から聖母マリアの色へ
六月の暦図 ベリー公のいとも豪華な時祷書(Wikipedia) シャンティイ、コンデ美術館※(仏)(p87)
図: 《 羊飼い》 ハンス・メムリンク ミュンヘンアルデ・ピナコテーク(p87) ⇒だいぶ検索しましたがWEB上に見当たりません
第四章 自然感情と緑
森が育む緑のシンボル
五月祭
《ベリー公のいとも豪華な時祷書》(Wikipedia)
シャンティイ、コンデ美術館(p105) ※、※http://www.christusrex.org/
図: 狩りの書 1405〜1410年 フランス国立図書館(p107)
図: アルノフィーニ夫妻 ヤン・ヴァン・エイク 1434年 ロンドン・ナショナル・ギャラリー(p113)
図: 《人の一生》 『事物の属性の書』15世紀 フランス国立図書館(p116) イングランドの修道士バルトロマエウス・アングリクス著百科事典 (*)
図: イエスを誘惑する悪魔 トロワ大聖堂のステンドグラス1170〜80年頃 ロンドン ヴィクトリア&アルバート美術館(p119)
図:
《淫乱》の像 サン・タヴァン教会 11or12世紀 (p121)
(柳宗玄『フランス美術』講談社 1961年p39)
* 検索したところby小池寿子さんのページでは、バルトロメウス・アングリクスという表記で、書名も『事物の本性について』(挿絵 ピエール・ルミー画 ブリュッセル王立図書館所蔵写本4世紀末)※
第五章 忌み嫌われた黄色
人を排除する黄色 語句の検索
*1 fauve(フォーヴ)・・獣の艶のある気褐色の毛色⇒野獣派、黄褐色=タンニン色
*2 13世紀のアーサー王物語の一つ『ギロン・ル・クルトワ』という作品の中の「黄色の絹の夫人」
・・騎士をだまし続ける、欺瞞の色
図: 《熊使い》15世紀末 サン・ジャン・ド・モリエンヌ(p127)
図: 《キリストの捕縛》Wikipedia)『「いとも美しき聖母時祷書」※1380年ごろ フランス国立図書館(p130)
図: 《〈こころ〉と〈怒り〉の戦い》ウィーン国立図書館(p135) アザミの花と黒いイバラの枝
図: 《ダビデと道化》 ベルギー王立図書館(p137)
※イスカリオテのユダWikipedia
※ヨーロッパにおける「黄色」 ※820年に即位した嵯峨天皇以来、
天皇の正装には、
黄櫨染御袍 (こうろぜんごぼう)
と呼ばれる黄色にまつわる西と東より
第六章子どもと芸人のミ・パルティと縞
色の組み合わせの意味黄色と緑のミパルティ※
カポディモンテ美術館
マグダラのマリアを描く際に縞の布を添える絵画上の習慣(p150)
《悔悛するマグダラのマリア》
ティツアーノ画 1560年代 エルミタージュ美術館のものが図6として出ていました
図: 《殉教の聖人》14世紀 パリ、アルスナル図書館(p146)
図: 《道化ゴネルラ》ジャン・フーケ画 15世紀 ウィーン美術史博物館(p147)
図: 《運命女神》 15世紀 サンクトペテルブルク 図書館(p152)
図: マネッセ写本より 1305〜40年 ハイデルベルク大学図書館(p154)
図: 《聖マルティヌスの騎士叙任》シモーヌ・マルティーニ画 14世紀 アッシー時、聖フランチェスコ聖堂壁画(p156)
図: 《食卓のイズーとアーサー王》『散文トリスタン』より 14世紀 フランス国立図書館(p157)
図: フィレンツェ サンタ・マリア・ノヴェッラ教会壁画 1365年(p160)
図: 福者アゴスティーノ・ノヴェッロの祭壇画 シモーヌ・マルティーニ画1324年、シエナ国立絵画館(p160)
第七章 紋章とミ・パルティの政治性
政治的な主張図: 《虎と標語を刺繍した衣装のシャルル6世》(口絵p8)
図:
《シャルル6世のドゥヴィーズ、エニシダと孔雀と標語》
1420年ごろ ジュネーブ大学図書館(p170)
ドゥヴィーズdevise・・中世では、個人的な、多分に遊戯的な文様と色彩と標語のすべてをあらわす
図: 《カール4世皇帝の入市》「フランス大年代記」1380年ごろ フランス国立図書館(p172)
図: パリ市の紋章『シャルル6世の勅令』1416年 フランス国立古文書館(p172)
図: 《1500年ごろのパリ市役人》1528年 パリ、アルスナル図書館(p174)
図: 《アランソン公を裁くシャルル7世》ジャン・フーケ画 1458年 通称「ミュンヘンのボッカッチョ写本」バイエルン州立国立図書館(p177)
図: 「シャルル7世追悼前日の祈祷」15世紀 フランス国立古文書館(p172)
第八章 色の価値の転換
黒の流行終章 中世人の心性
心性の転換期としての中世末期図: 《涙の泉の武芸試合》1528年 パリ、アルスナル図書館(p188)
《フィリップ善良公》15世紀 ブルッヘ、ブルーニンゲ美術館(p193)
※ブルゴーニュ公国のフィリップ善良公(1396-1467) Wikipedia、※黒服流行のさきがけとなった
※家令フィリップ・ポー(1428−1493年)の墓 シトー修道院ルーブル美術館公式ページ(日本語):黒いマントをまとった泣き男たちブルゴーニュ公の家令で金羊毛騎士団(Wikipedia)の騎士だった
図: 《マリー・ド・クレーヴのドゥヴィーズ》1528年 フランス国立図書館(p196)
15世紀前半の紋章官 シシル
『色彩の紋章 』シシルSicille著 (伊藤亜紀/徳井淑子訳&解説)悠書館2009年刊
(Le blason des couleurs en armes, livrees et devises, Germain Rouze et Olivier Arnoullet, Lyon, 1528)
感想
15世紀の小著ということで、本文は半分で解説と註釈が半分という本であるが、フランス縦型紋地において金の百合がなぜ青の地に描かれるのかmな祖面白い。旧約聖書やプリニウスと同等の位置に「アルノルドゥス曰く」という台詞が多くがあるようにもみえた。(走りよみ)
WEB
検索
★★イタリア・ルネサンス年表
★★★アンジェ城
※南仏プロヴァンス情報プロヴァンス万歳!!・・このサイトにはマリアの衣装にある穂麦の図が背景にあるのだが ?
バルトロマエウス・アングリクス・・※パノフスキー講義ノート
http://ciel.relieur.net/
※http://chiquitabanana.blog53.fc2.com/blog-entry-312.html
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