色colourのシンボル

色についての基本 に続き、以下、目次読書です・・

色で読む中世ヨーロッパ (講談社選書メチエ)
出版社/著者からの内容紹介
色に込められたメッセージを読む
黄色に付随する負のイメージ。
権力と護符の色としての赤。
美しくも不気味な緑。
15世紀に大流行する黒。
当時の人々は色にどのようなメッセージを込めたのか?色彩に満ちた時代はどのようにして始まり、そして終焉を迎えたのか?
さまざまな色から中世ヨーロッパ人の感情生活を捉え直す。
大変興味深く読んだのであるが、

涙文とは、しずくの形をした模様で十三世紀のアーサー王物語を 起源にもつ。本来は物語の中の紋章であったが中世末期の貴族が文学の中のアーサー王 の騎士たちを自らの手本とし、「涙の泉の」と冠した武芸大会をブルゴーニュ公フィリップ 善良公が催したことによって、涙文はドゥヴィーズとして多用されるようになり、衣服や宝飾品などさまざまなも のに使われ、中世末期の人々の生活の場を彩るようになった。(p192)

「涙模様」とは、この本で初見です。
黒について、14世紀末ごろからイメージが反転して、 それまでの黒い色に付随していた 負の感情(汚い・醜い・危ない、絶望、憤怒、嫉妬、不安、悲嘆)から、 悲しみの色としての黒を再発見して、 根強い流行色になった・・とこの徳井淑子さんの本に出てくるのですが、
「15世紀はメランコリックな世紀で涙模様も流行した」(p192)というんですが、 これ(涙文)がわからない。 「ペイズリー文様」とはちがうの??あれはもっとあとですね。? 「涙模様」というのは感情表現になってしまう? 涙滴模様とかいう言葉ではあったのかな?
テア・ドロップとは聞いたことがあります。(涙滴模様) それの方も、 主な文様字典の索引を見たのですが、みあたらないので、これはちょっとおいておきます。
追記:p194に「涙模様はジョウロや雨滴へと文様を拡大させていった」、とあるので、この「模様」というのは、現代の文様字典に載るような名称を獲得するには至らなかったということでよいかと思う。

以下に、載っている図をWEBで検索しながら、できるだけゆっくりみてみます。

目次読書

はじめに

「シュレック」と中世ヨーロッパ/ 色を発見した十二世紀

序章/色彩文明の中世

黄色と縞柄のパジャマ・ルック
カラフルな忠誠とモノクロの近代
黒服とプロテスタント
色をめぐる論争
中世文学の中の色
パープルとスカーレット
彩色本から印刷本へ
言語木の王を持つ色
武芸試合の多彩な色

「色の意味は時の流れとともに変化する。しかし、その意味のすべてが時間の経過の中で跡形もなく消えてしまうわけではない。文明の底に残る意味と変化する意味、その両者を見つめていこう」p17


騎馬試合の騎士(p27)

図: アンジュー公ルネ著「騎馬試合の書」フランス国立図書館(p28)

第一章 中世の色彩体系

白・黒・赤による色彩体系
中世人は何色を好んだのか
赤はもっともっとも美しい
水は白い
騎士の純潔を示す白
光は白か金か
醜く危険な黒
悲しみという悪徳
金髪のイズーと白い手のイズー(
白い帆と黒い帆

「七つの虹の色が発見されたのは、1704年ニュートンの「光学」
太陽の白色工はプリズムによって赤・オレンジ・黄・緑・青・藍・菫(ヴァイオレット)のスペクトルに分解されることが発見され、ここに七つの虹の色から白と黒が無彩色として科学的に分けられることになった。」p32

図: アンジュー公ルネ著(Wikipedia)「美に囚われらし心の書」ウィーン国立図書館(p48)

図: 《騎士叙任式》(p42)

図: 《小鳥に説教する聖フランチェスコ》 ジョット画(p51)

第二章 権威と護府の赤

赤色のヴァリエーション
赤毛と左利き
カイガラムシから生まれたスカーレット
ケルメス染料一グラムに60匹の虫 貝紫の記憶
権力者たちの赤い喪服
赤い衣の医者
鉱物誌による宝石の効能
止血・魔除け・毒除け 赤に込められた願い

「赤が中世に好まれた色であることは、この色を示す言葉の豊かさによってもうかがわれる。 」p32
ラテン語ruber⇒rouge(ルージュ)赤い宝石ルビー
vermeil赤い花などもっとも頻繁 に使われるフランス語 ⇒英語vermilioinバーミリオン
スカーレットscarlet・・本来は中世ヨーロッパで産した深紅の高級毛織物
vermiculusミミズや蛆虫の幼虫
虫から取れる染料ケルメス染料
「中世は、古代文明の遺産である貝紫パープルという赤紫色の布への憧憬を受け継ぎ、赤色を尊重する文化的土壌をもっていた」(p61)
部中のケルメスカシや緑カシに寄生するカイガラムシ
ケルメス染料によるスカーレットが中世以降ふるわなくなるのは、 安価な中南米のコチニール染料がもたらされたため。

ケルメス染料1グラムに60匹の虫が必要・・1メートルの布代=600日分のパン代
貝紫・・純粋な染料1グラムに1万個の貝(アクキガイ科の巻貝)が必要(紀元前10世紀フェニキアから・・皇帝のシンボル、王侯の衣装)(p64)
赤は血の色

図: シチリア王ルッジェーロ2世(Wikipedia)戴冠式のパープルのマント1133年 ウィーン美術史博物館(p66)
※この図は視覚デザイン研究所の「ヨーロッパ文様事典」などにも載っている。パープルとは書いてなく、イタリア初期織物の産地シチリアの王立シルク工場で作られた、真珠と金糸で刺繍した豪華なまンととあり。聖樹を中心とした動物闘争文というが、一見、ライオンの目鼻がないように見える。

図: ジャン・フーケ画 ルーブル美術館蔵
大法官ジュヴネル・デ・ジュルサン 1460年ごろ


Charles VII_by Jean Fouquet 1445〜1450
シャルル7世の肖像1445年ごろ(p70) z
ジャン・フーケ画 ルーブル美術館蔵・・
これは大法官の方と一緒にローレンス・ゴウイングの「ルーブル美術館の絵画』に載っています

図: 「聖ステファノ伝」(Wikipedia)より マルティーノ・ディ・バルトロメオ画 15世紀 フランクフルト、ステューデル美術館蔵(p75)
(おくるみに包まれた赤ん坊が首に赤い珊瑚の枝をつりさげている)


マザッチョ フィレンツェ ウフィッツィ美術館(p76にある図)
(「くすぐる聖母」

第三章 王から庶民までの青

蛮族の色から聖母マリアの色へ
青か菫か
農民が身にまとうペール
礼節と認知の色
誠実を示す色
欺瞞の証し
ブリューゲルの《青いマント》は何を示すか
騙す人と騙される人
「飲兵衛で軽薄なイギリス人」の色

 
六月の暦図 ベリー公のいとも豪華な時祷書(Wikipedia) シャンティイ、コンデ美術館※(仏)(p87)

図: 《 羊飼い》 ハンス・メムリンク ミュンヘンアルデ・ピナコテーク(p87) ⇒だいぶ検索しましたがWEB上に見当たりません

図: 《ネーデルラントの諺》 ブリューゲル画 1559年 ベルリン国立美術館(p93)

第四章 自然感情と緑

森が育む緑のシンボル
青春と愛の色
ヨーロッパの季節感と五月
五月祭と狩猟のための緑衣
特別の日の晴れ着
「緑の服を着て森に行く気にならない」
中世における結婚
緑色の葡萄
人生の栄枯盛衰
淫蘭の罪


五月祭  《ベリー公のいとも豪華な時祷書》(Wikipedia)  シャンティイ、コンデ美術館(p105) ※http://www.christusrex.org/

図: 狩りの書 1405〜1410年 フランス国立図書館(p107)

図: アルノフィーニ夫妻 ヤン・ヴァン・エイク 1434年 ロンドン・ナショナル・ギャラリー(p113)

図: 《人の一生》 『事物の属性の書』15世紀 フランス国立図書館(p116) イングランドの修道士バルトロマエウス・アングリクス著百科事典 (*)

図: イエスを誘惑する悪魔 トロワ大聖堂のステンドグラス1170〜80年頃 ロンドン ヴィクトリア&アルバート美術館(p119)

図: 《淫乱》の像 サン・タヴァン教会 11or12世紀 (p121)
(柳宗玄『フランス美術』講談社 1961年p39)

* 検索したところby小池寿子さんのページでは、バルトロメウス・アングリクスという表記で、書名も『事物の本性について』(挿絵 ピエール・ルミー画 ブリュッセル王立図書館所蔵写本4世紀末)

第五章 忌み嫌われた黄色

人を排除する黄色
第四回ラレラノ公会議の過酷な施策
ユダと黄色
「あいつは黄褐色だ」という中世フランス語(*1)
黄色の比喩━悲しみと怒り
騎士をもてあそぶ「黄色の絹の夫人」(*2)
道化と子ども
ジャン・バルジャンの黄色い通行証

語句の検索
*1 fauve(フォーヴ)・・獣の艶のある気褐色の毛色⇒野獣派、黄褐色=タンニン色
*2 13世紀のアーサー王物語の一つ『ギロン・ル・クルトワ』という作品の中の「黄色の絹の夫人」 ・・騎士をだまし続ける、欺瞞の色

図: 《熊使い》15世紀末 サン・ジャン・ド・モリエンヌ(p127)

図: 《キリストの捕縛》Wikipedia)『「いとも美しき聖母時祷書」1380年ごろ フランス国立図書館(p130)

図: 《〈こころ〉と〈怒り〉の戦い》ウィーン国立図書館(p135) アザミの花と黒いイバラの枝

図: 《ダビデと道化》 ベルギー王立図書館(p137)

※イスカリオテのユダWikipedia
ヨーロッパにおける「黄色」 ※820年に即位した嵯峨天皇以来、 天皇の正装には、 黄櫨染御袍 (こうろぜんごぼう) と呼ばれる黄色にまつわる西と東より

第六章子どもと芸人のミ・パルティと縞

色の組み合わせの意味
道化服のミ・パルティ
たくさんの色を使うことへの戒め
娼婦のしるし
運命女神
楽師への蔑視感
宮廷奉公人とミ・パルティ
ミ・パルティを着て婚礼に出席
教育としての家庭奉公

黄色と緑のミパルティ


カポディモンテ美術館

マグダラのマリアを描く際に縞の布を添える絵画上の習慣(p150)
《悔悛するマグダラのマリア》 
ティツアーノ画 1560年代 エルミタージュ美術館のものが図6として出ていました

図: 《殉教の聖人》14世紀 パリ、アルスナル図書館(p146)

図: 《道化ゴネルラ》ジャン・フーケ画 15世紀 ウィーン美術史博物館(p147)

図: 《運命女神》 15世紀 サンクトペテルブルク  図書館(p152)

図: マネッセ写本より 1305〜40年 ハイデルベルク大学図書館(p154)

図: 《聖マルティヌスの騎士叙任》シモーヌ・マルティーニ画 14世紀 アッシー時、聖フランチェスコ聖堂壁画(p156)

図: 《食卓のイズーとアーサー王》『散文トリスタン』より 14世紀 フランス国立図書館(p157)

図: フィレンツェ サンタ・マリア・ノヴェッラ教会壁画 1365年(p160)

図: 福者アゴスティーノ・ノヴェッロの祭壇画 シモーヌ・マルティーニ画1324年、シエナ国立絵画館(p160)

第七章 紋章とミ・パルティの政治性

政治的な主張
入市式は一大スペクタクル
都市の自治権と王権のバランス
青い帽子か白い帽子か
歴代の「王の色」
パリ市役人のユニフォーム
イギリス占領下のパリ
三色ではなく二色
王への恭順と仕着せ

図: 《虎と標語を刺繍した衣装のシャルル6世》(口絵p8)

図: 《シャルル6世のドゥヴィーズ、エニシダと孔雀と標語》 1420年ごろ ジュネーブ大学図書館(p170)
ドゥヴィーズdevise・・中世では、個人的な、多分に遊戯的な文様と色彩と標語のすべてをあらわす

図: 《カール4世皇帝の入市》「フランス大年代記」1380年ごろ フランス国立図書館(p172)

図: パリ市の紋章『シャルル6世の勅令』1416年 フランス国立古文書館(p172)

図: 《1500年ごろのパリ市役人》1528年 パリ、アルスナル図書館(p174)

図: 《アランソン公を裁くシャルル7世》ジャン・フーケ画 1458年 通称「ミュンヘンのボッカッチョ写本」バイエルン州立国立図書館(p177)

図: 「シャルル7世追悼前日の祈祷」15世紀 フランス国立古文書館(p172)

第八章 色の価値の転換

黒の流行
喪の色━黒・黄・タンニン色・菫色
帳簿に残された流行色
牧歌的はものへの憧れ
悲しみの発見
涙模様の流行
黒服の女とタンニン色の女、どちらが不幸か
黒の流行の汎ヨーロッパ性
治世のシンボルへ

終章 中世人の心性

心性の転換期としての中世末期
色による排除と連帯の社会
色のトリックとメッセージ
抽象的思想と具体的表現の往復
視覚の優位
色彩という表象世界

図: 《涙の泉の武芸試合》1528年 パリ、アルスナル図書館(p188)


《フィリップ善良公》15世紀 ブルッヘ、ブルーニンゲ美術館(p193)
※ブルゴーニュ公国のフィリップ善良公(1396-1467) Wikipedia黒服流行のさきがけとなった
※家令フィリップ・ポー(1428−1493年)の墓 シトー修道院ルーブル美術館公式ページ(日本語):黒いマントをまとった泣き男たちブルゴーニュ公の家令で金羊毛騎士団(Wikipedia)の騎士だった

図: 《マリー・ド・クレーヴのドゥヴィーズ》1528年 フランス国立図書館(p196)


15世紀前半の紋章官 シシル

色彩の紋章 』シシルSicille著 (伊藤亜紀/徳井淑子訳&解説)悠書館2009年刊

(Le blason des couleurs en armes, livrees et devises, Germain Rouze et Olivier Arnoullet, Lyon, 1528)


「古典古代から中世を通じて蓄えられてきた博物学の知識を縦横に駆使し、色の使い方の歴史的経緯と、色にこめられた象徴的意味合いを集大成した、西洋中世の色彩論の原点。」

著者紹介 〈シシル〉アラゴン、シチリア、バレンシア、マリョルカ、コルシカ、サルデーニャの王にして、バルセロナ伯アルフォンソの紋章官。

目次(抜粋)
『色彩の紋章』第一部(シシル) 序言
最初にして第一の論の一覧
色彩の紋章の一覧
色にかかわる紋章の最初の考察
色についての質問
第一の金属、金色、そしてその紋章について
銀という第二の金属および色と、その紋章について 朱という第三の色と、その紋章について、
青という第四の色〜〜〜、
黒という第五の色〜〜〜、
緑という第六の色〜〜〜、
赤紫(プルプル)という第七の色〜〜〜
紋章についての問答
ギリシア語での金属、色、色における金属
主要な七惑星の標語(ブラゾン)
七元徳、三対神徳と四枢要徳の標語
週の用語の標語
一年の四季の標語
『色彩の紋章』第二部(シシルではない)
色彩の考案者
色彩の効力について
色彩の基礎と種類について
個別の色とそれらの意味(ブラゾン)について 最初に白色とその仕着せ(リヴレ)について、
黄褐色と薄黄色(バール)、赤、黄、緑、赤紫、黒、青・青緑・群青、淡紅、すみれ、ねずみ
けものや鳥、それらの変異について
混合色とそれらの標語(ドラヴィーズ)について
色による男性の服飾の精神性(モラル)について、婦人の〜〜
色によって以下に木氏は叙勲されるのか
色に関する精神的意味 色は人の性格に従って以下に身につけられるべきか
色彩の組み合わせの美とその意味
置かれる場所による色彩の意味小論

解説 隠れたべストセラー━『紋章指南書』から『色彩象徴論』へ(伊藤亜紀)
博物誌の伝統と近代的な感性(徳井淑子)

感想
15世紀の小著ということで、本文は半分で解説と註釈が半分という本であるが、フランス縦型紋地において金の百合がなぜ青の地に描かれるのかmな祖面白い。旧約聖書やプリニウスと同等の位置に「アルノルドゥス曰く」という台詞が多くがあるようにもみえた。(走りよみ)


WEB 検索
★★イタリア・ルネサンス年表
★★★アンジェ城
※南仏プロヴァンス情報プロヴァンス万歳!!・・このサイトにはマリアの衣装にある穂麦の図が背景にあるのだが ?
バルトロマエウス・アングリクス・・※パノフスキー講義ノート
http://ciel.relieur.net/
http://chiquitabanana.blog53.fc2.com/blog-entry-312.html

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