漢字の基礎知識

「六書」(文字のおさらい 2)

漢字の四つの成り立ち

象形文字:物の形を具体的にえがいた文字

※象形文字の数は600字ほどとされている

指事文字:印や記号を使って表した文字

※指示文字の数は100字ほど

会意文字:漢字の意味を組み合わせた文字


形声文字:漢字の意味と音を組み合わせた文字

※形声文字は漢字の7割以上をしめるといわれる
許慎が『説文解字』で示した分類(9千あまりの漢字を形によって分類)

許慎『説文解字』
現存最古の字形によって分類・配列した辞書
象形・指事・会意・形声・転注・仮借

=もと「文様」の意味
・・絵画・図形のような単体字

=孳(:生み増えるの意)     ・・合体字

『説文解字』とは、文(単体字)字(合体字)を解説する合理的体系的な研究であり、漢字学の聖典として、2000年間、絶対的な権威をもっていた。
20世紀初頭に殷王朝の甲骨文字が出現し、許慎が見ることができなかった、紀元前13世紀の字形を見ることが可能となった。
ここで登場したのが、白川静である。

『説文解字』:漢字学の聖典(AD100年)
『説文解字注』:漢字学の必読文献(18世紀)
甲骨文字の発見(20世紀)→ 白川静の研究


六書とは、漢字の6つの造字法・運用法のことである

造字法:象形・指示・会意・形声
運用法:転注・仮借((一般的な説⇒白川静はこれも造字法とする 注1)

漢字の作られ方・用いられ方に関する6つの基本原理

古くは班固の『漢書』芸文志に言及があり、「象形・象事・象意・象声・転注・仮借」とし、六書を「造字の本」と定義

鄭玄の『周礼注』では、「象形・会意・転注・処事・仮借・諧声」としている。
許慎によって、六書の一つ一つについて詳しく解説し、
その造字原理に従って部首により漢字を配列し、解釈を行った字書『説文解字』が作られた。
これ以降、六書は、漢字を分類する基準となり、また漢字の語源を探索する手段となった。

19世紀(※?)、殷の甲骨文が発見されたが、その分析にも六書が大きな役割を果たした。Wikipedia(六書)


Wikipedia 班 固(はん こ、32 - 92 後漢初期の歴史家、文学者)
六書は周代の官制について書かれた書物『周礼』の地官保氏篇に典拠がある。しかし、そこでは六書の具体的内容には触れられていなかった。
※鄭玄(てい げん、127- 200 後漢末)
※Wikipedia周礼(しゅらい)は、儒家が重視する経書。
現在通用している『周礼』は、『十三経注疏』に収められた 後漢の 鄭玄注
唐の賈公彦疏が付けられた『周礼注疏』である。

     ※賈公彦(りこうげん、生没年不詳 初唐の儒学者)

注1.「字統の編集について」p4

転注と仮借は、文字の構成原理を説くものでなく、いわば用技法の問題として久しく理解されてきたが、
転注は意符的系列化の方法であり、
仮借は本来的に仮借によって成立する字であるから、
これもまた造字法である。〔漢書「芸文志」〕に六書を「造字の本なり」とするのは、その意味において正しいとすべきである。

六を愛する中国人!?

六藝(りくげい)・・古代中国で教えられていた
六種類の教養科目
礼(作法)
楽(音楽)
射(弓術)
御(馬術)
書(文字)
数(算数)

※藝(ゲイ)・・何かを植えること、 芸(ウン)=香り草、防虫剤
中国ではこの2字を混同することはない ※
(藝の簡体字は草冠と乙)   (阿辻哲次「漢字と日本人の暮らし」p114)

古代の中国人は数に神秘的な意義を与えていた。
『説文解字』が部首の数を五百四十にそろえているのに、
意味がないはずはない。
五百四十とは、五十四の十倍である。
五十四は六と九の積である。
六と九は『易』での陰と陽の象徴
の数であった。つまり万物を構成する二つの要因である陰と陽を、象徴する数をかけあわせた「五十四」という数を基盤としている
許慎の手法は、真理と意識されていた『易』の思想体系にのっとって、森羅万象を文字の次元で構築しようという行為なのであった。
いいかえれば、彼は文字を並べる事で宇宙を構成しようとしたのだ。それはまさに文字のコスモロジーであった。
(阿辻哲次 漢字学『説文解字』の世界 p165)

芸
芸(ゲイ)旧字は藝・・
ウンは別字

芸(ウン)・・クサギル(白川静『常用字解』)


芸(ウン)・・耕耘除草(白川静『常用字解』)

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段玉裁『説文解字注』

段玉裁(だんぎょくさい 清代 1735~1815

『説文解字』の解釈に金字塔を打ち立てた人物 
『説文解字注』は
声符でありながら同時に意味も含む字の考察など、許慎の「六書」の見直し的註解も行った古典


段玉裁の「説文解字注」データベース
http://kanji-database.sourceforge.net/

世界大百科事典内の《六書音均表》の言及 【段玉裁】より …

官吏としての経歴は恵まれたものといえないが,最初の上京以後
戴震に師事,役所の仕事を終えてから夜研究に専念する生活を送り,多くの業績をあげた。

※戴震(たいしん、1724年 - 1777年)は中国清代の学者。清代考証学の代表者。

《六書音均表(りくしよおんいんひよう)》は古音(こいん)を17部に分け,とくに後代一つに合流していた支・脂・之3部の区別を明らかにしたことの意味は大きい。《音均表》を付録した《説文解字注》説文学の最高峰とされる。

清の段玉裁が著した『説文解字注』(30巻)は、『説文解字』に対する注釈の最高峰とされる
「甲骨文字が発見されたのは、段氏の没後80年以上経ってから」
by http://www.l.u-tokyo.ac.jp/digitalarchive/collection/onishi_katsuya.html

段玉裁《六書音均表》(六書音韻表〕 より

『説文解字』は象形・指事・会意・形声の書

『爾雅』は転注・仮借の書

続く ⇒ 「『説文解字』の世界」(阿辻哲次さん)
『説文新義』(白川静)

段玉裁

おまけme(学習用)
甲骨文字小字典 (筑摩選書) 』落合 淳思(筑摩書房 (2011/2/16)


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