漢字暦

卓上型白川静漢字暦

  今年のカレンダーは平凡社の 白川 静 漢字暦 2011 卓上版
せっかくですので、この1年毎週、そこにある一字の漢字を見ています。

字源は体系的に、字群によって証明されることを要する」(「字統の編集について」白川静)


3月19日、落合淳思さんの「甲骨文字小字典 (筑摩選書) 」 (2011/02/16刊)を購入し、学者の良心を感じた。
白川静さんの字解に対し 「この解釈に論理的な矛盾はないが、甲骨文字には人名としての用例しかないので確証も得られない」 ・・そうそう、そういうことはあると思います。 白川静さんが「文学的解釈」に行きすぎているのではと感じる場合もあるので、こういうの、
ちょっと小気味よいセリフなのだ(笑)
(同様のことを阿部哲次さんは別の言い方で言っていたと思う。)
この本は教育漢字300余字のミニ字典です・・
後ほど参照しながら、追記します。


2011年第10週

書かれていることは以下
==以下引用===========
サイは祝詞を納める器である。 その器の中に神の「音なふ」しるしが現れるので、その蓋を少し開いてみるのが「曰(えつ)」である。
「曰(いわ)く」とは神の示す言葉であった。それで、「曰」は、「のたまはく」のように、敬語に読むのが本義である。

更新日2011年3月3日(水)


『角川大字源』を参照します。
その解字では、象形指示。
口の中から、ことばまたは気息が出るさまを示す。。
曰(ひらび)部・・曰をもとにして、口から発することばに関する文字ができているが数は少ない、として挙げられているのは、 甲、申、由、 曳、曲、更、 沓、曷、曼、曾、會、替、曹、 東、書、最、量、智、魯、朁・・

『字統』を参照します
「音:エツ、訓:いう・ここに」・・ということで探し出すのに苦労しました。
『説文』の曰部 に「曰」以下7字(「冊の下に曰」さつ、「曷」かつ、「勿の下に曰」こつ、「替」さん、「沓」とう、「曹」そう)を列しているが、 者、書、暦、などもみな曰に従う字。載書のことに関する。 祝禱は深く蓋蔵することによってその機能を保ちうるものであるから、 吉、古、咸(かん)等はみな、鉞(まさかり)や干(たて)などの聖器を サイの上に加える形。
、 曷、朁、沓は、曰にそれぞれ呪物あるいは呪的行為を加えて、その呪能に働きかける意をもつ字である。

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見・望

2011年第11週

「見(けん)」は大きな目で凝視する、また「望(ぼう)」は遠くを望み見る目が強調して書かれている。
特定の場合の「見る」という行為は呪的なものであった。
「望」は「望気(ぼうき)」といって、 遥か遠くの敵の様子などを、雲気(うんき)を見て察することが行われた。

更新日2011年3月10日(木)


「常用字解」によると、
==以下引用===========
「見」・・象形。
目を主とした人の形。人を横から見た形(儿)の上に大きな目を書き、人の目を強調して、「みる」の行為を言う。

「望」・・形声。
音符は亡(ボウ)。甲骨文字の字形は、つま先で立つ人を横から見た形(壬てい)の上に 臣(上方を見ている目の形で、大きな瞳)を書く形で、 つま先立って遠くを望み見る人の形であり、象形の字。 これに音符の亡を加えた望は形声の字。
遠くを望み見ることから、「のぞむ、まちのぞむ、ねがう」の意味に用いる。
つま先立って大きな瞳で遠方を望み見ることは、 霊気を見て占う行為であり、
また目のもつ呪力(まじないの力、呪いの力)によって、敵を押さえつけて服従させる呪的な行為であった。
甲骨文に望乗という氏族名がみえ、軍隊に従っているが、目の呪力によって敵状を知り、敵を服従させることを職務としていた氏族であろう。

『角川大字源』を参照します。
その解字では、「見」・・形声。
意符の目(め)と、音符のケン (人体の巻曲げした形 儿 は変わった形。あらわれる意=顕ケン)とから成る。目前にあらわれる意。 ひいて、「あらわれる」「みえる」「みる」などの意に用いる

2011年第12週

眼の呪力を強めるために、眼の周囲にくまどりなどの媚飾(びしょく)を施すことがあり、 そのような媚飾を加えた巫女(ふじょ)は「媚(び)」とよばれた。 彼女らが行う呪的な行為は、媚道(びどう)としておそれられた。

更新日2011年3月16日(水)


蠱 ・ 蔑

2011年第13週

「媚」が、呪霊をもつ虫、すなわち「蠱(こ)」の呪力を用いることもあり、 それを「媚蠱(びこ)」という。 彼女らは戦争のときには陣頭にあって鼓を打ち、戦いに勝つとまず敵の媚女を殺した。
それが軽蔑の「蔑」で、その字をまた「蔑(な)し」とも読むのは、これを殺すことによって、 その呪能を失わせることができるからである。

更新日2011年3月21日(月)


2011年第14週

(以下転載)
媚蠱(びこ)がたたりをなして病気を起こさせるという俗信の由来は、甚だ古いようである。
古代の人々に、このような呪霊の存在を信じさせたのは、おそらく夢という現象ではないかと思う。
「夢」は「莧(かん)」と「夕(せき)」から成り、今の字形においても、 上部に「媚」の古い形(かん)を残しているが、 夜(夕)、睡眠中の夢にいろいろなものが現れるのは 呪霊を使う媚蠱のなす技と考えられた。

更新日2011年3月28日(月)


『角川大字源』を参照します。
その解字では、形声。
意符の夕(よる)と、音符の((夢の字の夕以外の部分))(ぼう、目のはっきり見えない意)とから成る。夜の暗い意。
夢の意の本字は、家と爿(しょう、人が寝台に伏す様)と夢とから成る。

『常用字解』を参照します
会意。
莧(艸かんむり見るの足に点つき)と夕を組み合わせた漢字。
莧は眉を太く大きく描いた巫女神に仕える女)が座っている形。 祖先を祭る廟の中で、その巫女がお祈りしている形が莧(寛)である。 夢は睡眠中に深層心理的な作用として現れるとされるが、 古くは呪術を行う巫女が操作する霊の作用によって夜(夕)の睡眠中にあらわれるものとされた。
高貴の人が死ぬことを薨(こう)というが、高貴の人には夢魔の危険が多かったのであろう。

だいぶ違いますね。
落合さんの「甲骨文字小字典」の方は、
会意⇒形成
寝台に寝ている人が夢に驚いて目を覚ました様。目を大きく開けた人の形(※べつ)は発音も表す亦声の部分。
西周金文には、夕を意符、※べつを声符とする「夢」の字形が見えるが、
この段階では「くらい」を意味した。
篆書では(『角川大字源』と同じ)
(※べつ・・「蔑」の上の部分・・後ほど追記します)

次週は

「夔(き)」は音楽の祖とされ、頭に飾りをつけ両手を科剤、一本足で舞う神の姿である。 ・・(次ページにつづく

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  1. 口(さい)
  2. 史(ふみ
  3. 使・事
  4. 尋・左・右
  5. 兄・祝
  6. 言・告
  7. 語・舎・害
  8. 闇・問
  9. 見・望
  10. 蠱・蔑

口(さい)(さい)

神に祈り誓うときの祝詞を入れた入れ物


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